心霊写真

 夏休み。僕は友人と二人で、公園で花火をした。いろんな写真を撮った。打ち上げ花火、ロケット花火、線香花火……。夏も終わり、現像した写真を二人で見ていると、友人が妙なことを言った。
「お、おい、これ……、もしかして心霊写真じゃないか?」
 それは僕と友人の二人きりで写っている写真だった。地面で燃える筒型の花火の周りで、二人が楽しそうに笑っている。この場面はよく覚えている。たしか、四方に吹き出している火花に向かってどれだけ近づけるか、というようなことを競っていたはずだ。
 これのどこに幽霊が写っているというのだろう。よく撮れた写真ではないか。二人の全身像、色とりどりに輝く花火、背景のアスレチックから茂みの中と、すみずみまで写真を見回してみたが不審なものはどこにもなかった。
「はは、どこにもおかしなところはないじゃないか……。変なこというなよな」
 幽霊だとか、人魂だとか、僕はそういった怪談にはとことん弱い。自分が写っている写真に幽霊がいるなんて考えたくもなかった。
「あのとき、公園にいたのは俺たち二人だけだったし、何かが写っているわけないだろ。しっかりしろよ。夏休み明けで、疲れているんじゃないか?」
 と、僕は友達の指摘を笑い飛ばした。しかし、彼の表情は険しいままだった。
「たしかに、この写真に幽霊は写っていないし俺たちが花火の周りで遊んでいるだけだよ。だから、おかしいんじゃないか……」
 幽霊は写っていないから、おかしい?
 友人の言っている意味が分からなくて、僕はすぐに聞き返した。
「幽霊はいないのに、いったい何がおかしいんだよ」
「お前も、いま自分で言っただろう。公園にいたのは俺たち二人だけだったって」
「あぁ、言ったよ。……それがどうしたんだ?」
 いつまでたっても要領をえない僕に向かって、友人は苦虫を噛み潰したような顔でつぶやいた。
「公園には俺たちしかいなかったのに、誰がこの写真を撮ったんだよ」


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