むかしむかし、浦島太郎という心優しい男がいた。
海辺を歩いていた浦島は、子供達にいじめられている亀に出会った。
「これこれ、亀をいじめてはいけないよ。おこづかいを上げるから、町にでも遊びに行きなさい」
お金をもらった子供達は嬉しそうに走り去り、助けてもらった亀は浦島にしきりに感謝をした。
「ありがとうございます、ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、竜宮上へ招待させてください」
「そうだな、ぜひ連れて行ってくれたまえ」
浦島は亀の背に乗ると、そのまま海の底へもぐっていった。移動している間、亀は竜宮上の素晴らしい様子を浦島に説明したが、彼は適当に聞き流していた。
「そうか、それは凄そうだな。もしかして、乙姫という女がいるんじゃないか?」
「おお、よくご存知で。乙姫様の名は、地上にまで届いてらっしゃるのですね」
亀が機嫌良さそうに笑うと、浦島の顔は対照的に曇り、唇をかみ締めた。そして、彼らは海の底で光り輝く竜宮上へたどり着いた。まずは、ひらめやたいが軽やかに舞って浦島を迎えたが、彼はめんどくさそうに魚たちを追い払った。
すると、建物の奥から乙姫が姿をあらわした。
「これはこれは、亀を助けていただき、何とお礼を申していいか……」
乙姫がだんだん近づいてくると、浦島は物凄いスピードで彼女のもとに駆け寄った。
「あ、あなたは!?」
浦島の顔をはっきりと見た乙姫は驚きをあらわにした。
「このやろう、何とかまた戻って来たぞ! 早く若返りの薬を出すんじゃ!!」
彼のしゃがれた悲鳴は海底中に広がり、怒りの表情のせいで、顔面のしわは奇妙に曲がった。
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